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eKYCのヘ方式とは?

eKYCヘ方式とは

eKYC(電子的本人確認)の「ヘ方式」は、セルフィー(自撮り写真)と本人確認書類に内蔵されたICチップ情報を活用して、迅速かつ正確な本人確認を行う方法です。この方式は、犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づき導入されており、特に高いセキュリティを求められる分野での利用に適しています。

この方式では、スマートフォンのNFC(近距離無線通信)機能を利用して、ICチップ内の情報を直接読み取ります。これにより、本人確認書類の物理的な改ざんリスクを回避し、高精度な確認が可能になります。NFC技術は、近距離通信において非常に信頼性が高く、セキュリティを保ちながら効率的な情報のやり取りを実現します。

eKYCヘ方式の具体的な手順

  1. 専用アプリのダウンロード: eKYCに対応したサービス提供者の専用アプリをスマートフォンにダウンロードします。このアプリは、操作性を考慮して設計されており、ユーザーが迷うことなく手続きできるように工夫されています。
  2. 本人確認書類の用意: 運転免許証、マイナンバーカード、在留カードなど、ICチップを内蔵した本人確認書類を用意します。これらの書類は、国が発行した信頼性の高い書類であり、偽造のリスクを大幅に軽減します。
  3. セルフィーの撮影: スマートフォンのカメラを使用して、自分の顔写真を撮影します。撮影時には、適切な照明環境や背景に注意し、顔がはっきりと写るようにします。この画像は、AIによる照合のための重要なデータとなります。
  4. ICチップ情報の読み取り: 本人確認書類をスマートフォンに近づけ、NFC機能を利用してICチップ内の情報を読み取ります。この情報には、氏名、生年月日、住所などの暗号化された個人データが含まれており、安全に転送されます。
  5. 照合プロセス: アプリ上で、セルフィー画像とICチップ情報を照合します。このプロセスにはAI技術が活用されており、高精度かつ短時間での本人確認が可能です。特に、顔認証アルゴリズムの進化により、照合精度が向上しています。
  6. 確認完了: 照合結果が一致すれば、本人確認が完了します。この結果は、サービス提供者のデータベースに記録され、今後の利用時にも活用されます。

eKYCヘ方式のメリット

高いセキュリティ性能

ICチップには暗号化された情報が保存されており、改ざんが困難です。また、セルフィー画像との照合により、なりすましを防止できます。このセキュリティレベルは、従来の紙ベースの本人確認方法では実現できないものです。

ユーザーの利便性

専用アプリを利用することで、来店不要で本人確認が可能です。手続きは数分で完了するため、時間や労力を大幅に削減できます。また、アプリ内でガイドやヘルプが充実しているため、初心者でも安心して利用できます。

幅広い適用範囲

金融機関、通信事業者、不動産取引、ECサイトなど、幅広い分野で活用されています。特に、高額取引やリモート契約時に役立ちます。例えば、不動産契約のような物理的な書類確認が必要な取引でも、eKYCヘ方式を利用することでオンライン完結が可能になります。

eKYCヘ方式の課題と解決策

スマートフォンの対応問題

NFC機能が搭載されていないスマートフォンでは利用できないため、事前にデバイスの対応状況を確認する必要があります。

解決策: NFC非対応デバイス向けに、他のeKYC方式(ホ方式やチ方式)を併用する運用が有効です。特に、ユーザー層が広いサービスでは柔軟な対応が求められます。

利用者の慣れ

一部のユーザーには、セルフィー撮影やICチップの読み取りに慣れていない人がいる可能性があります。

解決策: アプリ内で操作手順をわかりやすく説明するガイド機能を提供し、ユーザーの利便性を向上させます。さらに、FAQやサポートチャット機能を追加することで、トラブルシューティングがスムーズに行えるようになります。

他のeKYC方式との比較

方式 特徴 メリット デメリット
ホ方式 セルフィーと本人確認書類画像の送信 簡単で手軽 書類の改ざんリスクがある
ヘ方式 セルフィーとICチップ情報の読み取り セキュリティが高い NFC非対応デバイスでは利用不可
ト方式 銀行APIによる本人確認 信頼性が高い 利用できるサービスが限られる
ワ方式 マイナンバーカードの公的認証を活用 簡便で迅速 マイナンバーカードが必須
チ方式 ICチップまたは郵送を組み合わせる方法 柔軟性が高い 照合に時間がかかることがある

まとめ

eKYCヘ方式は、セキュリティと利便性を兼ね備えた本人確認手法として、注目を集めています。特に、運転免許証やマイナンバーカードなどのICチップ情報を活用することで、高精度かつ迅速な本人確認が可能です。

一方で、スマートフォンの対応状況や利用者のスキルに依存する部分もあるため、他の方式と併用することで、より柔軟な運用が期待されます。

企業やサービス提供者は、利用者の環境やニーズに合わせて最適な方式を選択し、安心・安全な取引環境を提供することが求められます。