国が推し進めているデジタル手続法(デジタルファースト法)について紹介します。どのような法律なのかをはじめ、施行の背景や基本原則、メリット・デメリット、eKYCとの関係などをまとめました。
デジタル手続法は2019年12月に施行された法律で、正式名称は「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」になります。
デジタル手続法がどんな法律なのかというと、行政手続きを電子申請に統一するというもの。引っ越しや相続などにおける行政手続きのデジタル化が進められており、行政手続きの利便性や効率化の向上、運営の簡素化の実現が目的です。民間企業においても、デジタル技術を取り入れることでサービスの向上や業務の効率化が求められています。
デジタル手続法(デジタルファースト法)が施行された理由としてあげられるのが、日本における行政手続きの煩雑さや電子化の遅れです。日本の行政手続きは印鑑や書類の添付などが必要となり、非常に煩雑かつ分かりづらいとされています。
法人設立や登記の煩雑さ、外国人に分かりづらい手続きなどがビジネス環境においてマイナスになっていることから、行政手続きの簡便さやコスト・所要日数などの改善を目指したデジタル手続き法が施行されました。デジタル手続き法によって日本の行政手続きの煩雑さが改善されることで、ビジネス環境の向上や国際競争力の強化が期待されています。
デジタル手続法(デジタルファースト法)の柱となるのが、「デジタルファースト」「ワンスオンリー」「コネクテッド・ワンステップ」の3つです。これらの3原則について、解説していきます。
デジタルファーストでは、行政手続きやサービスがオンラインで完結する環境の実現を目指しており、書類の郵送や対面での手続きといったこれまでの制度や慣習の見直しを図っていきます。デジタルファーストが実現すれば手続きの工程をすべて電子処理できるようになり、紙の書類でやり取りする必要はありません。また、手続きにかかる手数料などの支払いもオンライン上で決済できるようになります。
ワンスオンリーとは、一度提出した情報に対し、以降の手続きで同じ情報の提出を求めないようにしようというものです。これまでは申請のたびに同じ情報を記入する手間がかかっていましたが、ワンスオンリーの実現によって手続きの時間短縮や確認に必要な人的コストの削減が期待されています。
コネクテッド・ワンステップは、複数の行政機関にまたがる手続きを一度の申請で完了できるようにしようというもの。民間サービスとも連携してコネクテッド・ワンステップを実現できれば、多くの手続きの簡素化が叶えられるでしょう。
たとえば、引っ越し時に必要な転出・転入届をはじめ、自動車関係書類の変更やライフラインの解約・開通手続きなどが、スマートフォンやパソコンから一括して手続きを行なえるようになります。
デジタル手続法(デジタルファースト法)により行政手続きを電子化できれば、これまで紙で提出していた書類を電子データで管理・保管できます。電子データなら必要な書類をすぐに検索できるため、業務効率の改善が期待できるでしょう。また、紙の書類と違って、広い保管場所の確保も必要ありません。
そのほかにも、デジタル手続法の基本原則となるワンスオンリーによって一度入力した情報を再度申告する必要がなくなるため、助成金や補助金の申請を手軽に行なえるようになります。
個人にとってのメリットとしては行政機関に出向いての書類の提出や押印が不要となるほか、住民票や戸籍謄本などの添付書類のために複数の部署に足を運ばなくてもよくなります。
デジタル手続法によってデジタル化が進められていけば、これまでITとの関りが少なった業種・職種においてもITツールの導入や使いこなすための技術が求められるようになります。デジタル環境を整備するためにシステムエンジニアの雇用が必要となり、人材の確保やコストがデメリットとなるでしょう。
また、デジタル化によってサイバー攻撃による被害の拡大も予想されます。個人情報や取引記録など重要なデータが不正使用される恐れもあるため、セキュリティ面の対策が必要です。
デジタルファーストにより民間サービスにおいてもデジタル化の波が広がっているなか、本人確認においてもeKYCを導入する企業が増えています。eKYCなら本人確認をオンラインで完結できるため、本人確認書類のコピーを郵送で提出する手間がかかりません。また、本人確認にかかっていたコストや負担も大きく削減でき、ユーザーや企業にとってもメリットの大きいサービスとなっています。
デジタル手続き法の対象となる企業は、「資本金または出資金額が1億円を超える法人」と「相互会社、投資法人及び特定目的会社」です。対象企業は、社会保険・労働保険の手続きにおいて紙から電子申請への見直しが求められます。電子申請が義務化される対象手続きは以下の通りです。
【健康保険・厚生年金保険】
【労働保険】
【雇用保険】
※電気通信回線の故障や災害その他の理由などにより、電子情報処理組織の使用が困難であると認められる場合、かつ電子情報処理組織を使用しないで当該申告書を提出できると認められる場合は例外的に紙での申請が可能になります。
デジタル手続法(デジタルファースト法)は行政手続きの電子化に関する法律ですが、デジタル手続法の適用範囲がさらに広がる可能性も考えられます。また、手続きの電子化はユーザーにとっても利便性の高いものであるため、本人確認をオンラインで完結できるかどうかが、どのサービスを利用するかを選ぶ基準になることも十分に考えられるでしょう。
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