郵便による本人確認は、eKYCと同じく非対面の本人確認であり、ユーザーが自宅にいながら利用できる方法です。しかし、郵便による本人確認にはいくつかのデメリットや課題があります。まずは、eKYCとの違いを含めて確認しておきましょう。
郵便による本人確認とは、郵便サービスを利用して顧客や取引相手の本人確認を行う方法であり、犯罪収益移転防止法(犯収法)に従った本人確認方法として特定事業者に義務づけられています。
郵便による本人確認では、申請書に記載されている住所と本人確認書類の内容を比較し、事業者から顧客の住所へ転送不要郵便や本人限定受取郵便を送ります。それが実際に届くかどうかで本人の居住状況を確認します。
郵便による本人確認は、非対面による本人確認を行いつつ、架空住所の利用を防ぐ手段です。
公的に認められた郵便による本人確認の方法は犯収法で規定されており、利用できる郵便サービスは「転送不要郵便」と「本人限定受取郵便」のみとなっています。
転送不要郵便とは、郵便物を送付する住所へ郵便物を届けられない場合、差出人へ返送されるように指定されている郵便です。
一般的に転居などで居住地が変更された場合、以前の住所に送られた郵便物を新住所へ転送してもらえるように郵便局で転送届を提出します。一方、転送不要郵便は文字通り転送サービスが反映されません。
転送不要郵便による本人確認では、住民票謄本・抄本の原本に記載されている住所へ事業者から書留郵便などを送る方法と、本人確認書類や補完書類に記載されている住所へ書留郵便などを送る方法の2パターンがあります。
本人限定受取郵便とは、郵便物の受取人として指定されている本人のみが郵便物を受け取れる郵便です。本人限定受取郵便には「基本型・特例型・特定事項伝達型」の3種類があり、郵便による本人確認としては主に特定事項伝達型が利用されています。
特定事項伝達型を利用する場合、まず郵便物が配達担当の郵便局へ到着した時点で、郵便局は受取人に対して「到着通知書」を送付します。そして、到着通知書を受け取った受取人は郵便窓口を訪れるか、郵便局へ連絡して配達してもらい、対面で郵便物を受け取るという流れです。
受け取り時には顔写真付きの本人確認書類の提示が必要であり、他の人物による受け取りは認められません。
郵便による本人確認のメリットとして、オンライン確認や非対面確認のために新しいサービスやシステムを導入しなくて良い点が挙げられます。
たとえば、eKYCなどリモートによる本人確認を行うためには、事業者側で対応するサービスを導入しなければならず、さらに顧客側でもインターネット環境の整備や対応デバイスの用意が必要です。
一方、郵便サービスはすでに公的に存在しており、利用に際して特別な準備や費用が必要ありません。
郵便による本人確認は、郵便物が届けられる場所であれば誰でも利用できます。そのためパソコンやスマホを持っていなかったり、インターネット環境がなかったりする顧客に対しても、郵便による本人確認であれば非対面の確認が可能です。
すでに説明したように、犯収法に従った郵便による本人確認は具体的な手順や方法が決まっており、それぞれの作業を段階的に完了しなければなりません。
公的書類の真偽の確認や、そこに記載されている住所や氏名の確認、さらに郵便物を作成して郵便局へ送付を依頼し、改めて郵便物が適正に配達されたか確認する作業も必要です。
また、住所の入力ミスなどは許されず、担当者の業務負担や精神的負担が大きくなることもデメリットです。
郵便での本人確認ではどうしても紙ベースでの情報管理が必要になり、個人情報のチェックや保管についても大きな手間やコストが発生します。
また、不要になった個人情報や本人確認書類についても法的に定められた手順で処分しなければならず、ペーパレス化を進めるとしても対応作業に時間がかかります。
郵便による本人確認は事業者側の負担を増大させるだけでなく、本人確認の対象となる顧客や利用者にとっても様々な負担やストレスを強いることが問題です。
住民票などの書類を用意して送付し、送られてきた郵便物を受け取り、さらに受け取り時には本人確認作業が必要です。また、郵便の配達にも時間がかかるため、本人確認の完了まで待たなければならないこともデメリットです。
郵便による本人確認は犯収法によって特定の事業者に義務づけられている本人確認の方法であり、業種によっては省略できません。しかし、郵便による本人確認のリスクやデメリットを踏まえて2018年に改正犯収法が施行され、犯収法に従った非対面の本人確認として「eKYC(オンライン本人確認)」を利用することが可能となりました。
これにより、郵便による本人確認でなくスマホやパソコンを活用したeKYCを導入する事業者も増えています。ただし、eKYCの導入に関しても注意点があることを覚えておきましょう。
犯収法によって認められているeKYCには複数の方法があり、一般的には「ホ方式」が利用されています。
ホ方式は、顧客が自らマイナンバーカードなど写真付き本人確認書類と、本人の顔をスマホやパソコンのカメラで直接撮影し、それらの画像を事業者へ送信し、データを受け取った担当者が目視で確認する方法です。
ホ方式の他にも、本人確認書類のICチップに記録されている情報を利用したり、金融機関などで既に保存されている情報を照合したりする方法も存在します。
犯収法に従った非対面の本人確認として郵便による本人確認は広く利用されてきましたが、郵便による本人確認は不正防止の対策として有効である反面、作業負担の増大や手続きにかかる時間が長くなるなどのデメリットがあります。
そのため、改正犯収法が施行されて以降はeKYC(オンライン本人確認)による本人確認も導入されており、今後はさらにeKYCが主流となっていくと考えられています。
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