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eKYCとディープフェイクの関連性

「ディープフェイク」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。近年ではディープフェイクの技術が進化しており、高精度な映画やゲームを楽しめる一方、偽動画などでの犯罪被害が多発しています。ここでは、ディープフェイクとは何かから、ディープフェイクによる犯罪やリスク、実際に起きた事例などを紹介します。

ディープフェイクとは

ディープフェイクとは、AI(人工知能)の深層学習である「ディープラーニング」と「フェイク(偽物)」を組み合わせた言葉です。AIを利用して人物映像などを偽造することができ、実際は本人ではないのにあたかもその動きをしているように見えます。そのため、顔認証などでも別の人物がなりすませる可能性が指摘されています。

ディープフェイクは、もともと悪用するためにつくられた技術ではありません。たとえば映画やゲーム、動画などの品質を上げるために活用されていました。しかしその高精度な技術を悪用するケースが増えてきており、日本のみならず海外でも被害が発生しています。

また、ディープフェイクの技術が進化したことで、近年では高度な技術がなくても偽の映像や動画の作成が可能。ディープフェイクを人間の目だけで見破ることは不可能といえるため、AIを用いたセキュリティ強化が進められています。

ディープフェイクによる犯罪・本人確認でのリスク

ディープフェイクを悪用することで、どんなリスクがあるでしょうか。

たとえばeKYCでは、運転免許証などの本人確認書類と顔の動画や写真が求められます。そこで、運転免許証は本人のものを用意し、動画や写真はディープフェイクで別人物がなりすますことは可能なのでしょうか?
日立製作所が行った実験では、「ディープフェイクを悪用してeKYCを不正に突破される可能性がある」という結論がでています。つまり現在ではディープフェイクによってなりすましが発生する可能性があり、セキュリティ対策の強化が必須です。

また、ディープフェイク動画による著名人への被害も発生しています。俳優や政治家などのディープフェイク動画を作成し、イメージダウンやトラブルにつながるような内容を発信。社会に大きな混乱を招いたケースもあります。

参照元:日経BP https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01760/083000004/

実際のディープフェイクの事例

ソーシャルニュースサイトにディープフェイク動画が投稿された事例

2017年12月、アメリカの掲示板型ソーシャルニュースサイト「Reddit」にて、あるユーザーがディープフェイク動画を投稿しました。動画内容は女優やアーティストを題材にしたポルノ動画となっており、閲覧したユーザーを中心に混乱が起こりました。
その動画が偽物であることはすぐに判明できたものの、題材にされた女優やアーティストにとってはイメージダウンにつながりかねません。この事件をきっかけに、ディープフェイクの悪用リスクが広く認識されていったようです。

参照元:AINOW https://ainow.ai/2022/03/07/259079/

「声」のディープフェイクで多額被害が発生した事例

ディープフェイクといえば映像というイメージがありますが、人物の声も偽造できる技術があります。

2019年3月、イギリスのエネルギー企業が日本円で約2,600万円もの多額被害に遭いました。
その犯罪手法は巧妙であり、親会社のCEOの声をディープフェイクで偽造し、子会社にあたるイギリスのCEOへ電話をかけたというもの。電話で22ユーロ(約2,600万円)の送金指示を受けた子会社のCEOは早急に振込を行いましたが、実は詐欺であったことが判明しました。電話の声はドイツならではの訛りや発音が再現されており、会話しているだけでは別人物だと全く気づけなかったそうです。

参照元:AINOW https://ainow.ai/2022/03/07/259079/

日本でディープフェイクによるポルノ動画が投稿された事例

日本で初めて判明したディープフェイク悪用による刑事事件だといわれている事例です。
2020年10月、芸能人の顔を合成して作成したポルノ動画をインターネットに投稿した罪で、熊本県の大学生と兵庫県のシステムエンジニアが逮捕されました。1本のディープフェイク動画を作成するために3万枚もの画像を訓練として使用したのだそうです。

参照元:AINOW https://ainow.ai/2022/03/07/259079/

eKYCはディープフェイクを防止できる?

ディープフェイク悪用による偽物と、その偽造を見破る技術はいたちごっこが続いています。ディープフェイクの偽動画を見破る技術が完成してすぐ、それを上回るディープフェイク動画が作成されるといったように、ディープフェイクによる犯罪被害を完全に防ぐことはとても難しいのです。

各企業では、どんどん巧妙化していくディープフェイクを見破るためのセキュリティ技術を進化させています。

たとえばeKYCを提供しているNECでは、顔認証で9つのランダムな動作を要求することで不正突破を防いでいます。さらに顔認証だけに頼らず多様な要素で認証する必要があるとして、今後の対策強化を実施。また、ポラリファイでは「顔認証の容貌が、動画や静止画だと自動検知された場合は認証不可」という取り組みを行っています。
このようにeKYCを提供する各企業では、ディープフェイクによる不正突破を防ぐための技術開発を進めています。

ディープフェイク対策の動向

各地で検出コンテストを開催

アメリカのMeta社は、ディープフェイクを検知する対策ツール開発を発展させるために、ディープフェイク検出コンテストを主催しました。ツール開発の研究に対し、助成金と賞金として、合計1000万ドル以上を出すと発表しており、複数の大学やAmazon Web Services(AWS)、Microsoft社などもこれに賛同を示して共同で支援しています。

これまでに、ディープフェイク検知の成功率は最高で83%と高い数値を出しています。

※引用元:日立製作所「情報セキュリティ・セミナー 「生体認証におけるディープフェイクの脅威と対策」(PDF)」
https://www.imes.boj.or.jp/jp/conference/citecs/22semi_03_docs/%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%92.pdf

「なりすまし判定技術」の提供

顔認証やeKYCサービスに組み合わせて利用できる、なりすまし判定の要素技術を提供している会社があります。AIのディープラーニングを用いた判定技術で、スマホや写真に映った画像が偽物か本物かを判定するものです(フェイク顔判定)。

まばたきなど、指示通りのアクションを求めることで真偽を判定する「アクション判定」もあり、動画のなりすましも判定できます。

スマホ向けの試用版アプリやOS用 の試用版SDKが提供されており、様々な製品やサービスに組み込んで実装できるようになっています。

※引用元:株式会社スワローインキュベート「なりすまし判定技術」(https://bio-check.pas-ta.io/

AIによる検出

AIによって、人間の目では判定しづらい色の違いや顔の血流などの特徴を評価することで、ディープフェイクで作成された動画や画像を検出することもできるようになってきました。

これまでの顔認識技術とAIを併用して、なりすましを高度に検知するシステムの開発も進められています。

偽物の動画を作るAIとそれを検知するAI技術のせめぎあいが起きており、eKYCサービスの利便性を活かすために、より高い安全性の確立が求められています。

※引用元:産経新聞オンライン「顔認証普及の裏で進むディープフェイク対策」(https://www.sankei.com/article/20220604-RQCB6QXGEZMX7HL34JV7PJC2VE/

eKYC向けのディープフェイク対策

eKYC向けのディープフェイク対策として開発が進められているのが、スマホへの検知技術の実装です。スマホカメラのフラッシュによる画面色変化に伴う明度変化で顔を検知する機能や撮影時のモニター検知機能、腕で顔を隠すなどのアクションを検知する機能など、多様な要素を組み合わせて認証することで、セキュリティーを高める技術開発が進められています。

また、顔認証の検知機能だけでなく、スマホの指静脈認証との連携や顔画像やSIMカード、端末の使いまわしを検知する機能など、写真や動画だけで認証を突破できないような仕組みづくりも有効と考えられます。

参照元:日立製作所 研究開発グループ「ディープフェイクの脅威およびeKYCへの攻撃と対策(PDF)」
https://www.imes.boj.or.jp/jp/conference/citecs/22semi_03_docs/%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%92.pdf

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