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eKYCはAIで自動化できる?

全工程の自動化は現状難しい

オンラインで本人確認を行うeKYCを導入するとして、人工知能(AI)を活用したシステムで画像の確認や処理、情報の検証といった業務を効率化したり自動化したりできれば、一層に省力化やコスト削減といった事業メリットを追及することが可能です。

しかし、法的に本人確認を義務とするサービスや取引に関しては、犯罪収益移転防止法などの法律によって手続きの内容や手順がルール化されていることも多く、全ての業務や処理をAIで自動化することはできません。

そのため、eKYCとAIを同時に導入して業務効率化を目指していくとしても、まずはどの範囲や領域に関して自動化を行い、どの範囲や対象に関しては専任者による作業や目視が必要であるのか、しっかりと明確化しておくことが必要となります。

AI導入によるメリット・デメリット

メリット

AIは情報解析や情報収集、情報管理などを効率するために有用なシステムであり、目的に合わせたAIツールやシステムを導入することにより様々な業務や処理をAIによって簡便化・自動化することが可能です。そのためeKYCでも、画像認識や文字の認識、入力された情報と画像で撮影されている情報の比較検証といった作業をAIによって自動化することができれば、24時間体制での本人確認や登録手続きなどを行えるかも知れません。

また属人性による作業品質の差やヒューマンエラーといったリスクを軽減できる点もメリットです。

AI審査による無人化がもたらす利点

AIを活用した本人確認業務の無人化は、業務効率化の観点から非常に有益です。従来は人手を要していた作業がAIによって自動化されることで、以下の利点が得られます:

デメリット

AIによる業務効率化や自動化は、そもそもAIを運用するためのプログラムやシステムと、そのAIが様々な関連情報を吸収して学習していくためのデータという、2つの要素が不可欠です。そのため単にAIを導入するだけでは十分な作業品質を維持できない恐れがあります。

また、そもそも犯罪収益移転防止法などの法律によって人間による「目視」が本人確認の法的要件として定められていることもあり、根本的にAIだけでは全ての業務を自動化することはできません。

AIを導入できる工程は?

審査

法的な定めが要件として存在していない業種や分野においては、入力された個人情報を参照してAIが自動的に審査や検証を行うことも可能です。

例えば入力された情報に虚偽がないかどうかチェックしたり、申込者の年齢がサービスの利用条件に適合しているか深謝したりといった業務をAIで処理することはできるでしょう。

証明書の真贋チェック

eKYCでは免許証や健康保険証、マイナンバーカードといった様々な証明書を本人確認書類として使用しますが、巧妙に偽造された証明書はカメラ越しに人間が見てもすぐに真贋を確定できないかも知れません。しかしAIでは細部まで正しいサンプルと比較して瞬時に情報解析を行うため、わずかな文字のずれやフォントの違い、模様の不備などから偽物を見分けられると期待されています。

ディープフェイクによるなりすましの脅威

ディープフェイクの概要と課題

ディープフェイクは、AIの一種であるディープラーニング技術を活用して、人物の顔や声を精巧に合成する技術です。この技術は本来、エンターテインメントや教育、クリエイティブな分野での活用を目的として発展してきましたが、近年では不正目的での利用が懸念されています。例えば、偽造された顔映像を用いて他人になりすまし、eKYCシステムを通じて金融口座やオンラインサービスに不正アクセスする手口が報告されています。

この脅威が特に深刻なのは、ディープフェイクの生成技術が一般に公開されており、低コストで高精度の合成映像を作成できる点です。犯罪者がこうした技術を利用することで、従来の顔認証システムでは検知が難しいケースが増加しています。

ディープフェイク対策としての技術的ソリューション

AIを活用した不正検知技術の必要性

AI不正検知の重要性

AIを活用した不正検知技術は、ディープフェイクを含む高度ななりすまし手法に対する有力な対抗手段です。従来の不正検知システムは、主に静的なルールベースで動作していましたが、AIは過去のデータを学習することで、未知の不正パターンにも対応可能な柔軟性を持っています。

不正検知技術の具体例

自動化には「AI-OCR」も活用

「OCR」とは手書き文字や紙に印字された文字などをデータとして認識・解析する処理やそのための機器であり、日本語では「光学文字認識機能」とも呼ばれます。

そして「AI-OCR」は、そのOCRをAI技術によって自動的に処理するためのシステムであり、免許証やマイナンバーカードなどの文字を自動認識してeKYCを効率化する上でAI-OCRは有用です。

AI-OCRの進化

従来のOCR(光学的文字認識)技術は、手書き文字や複雑なフォーマットには対応が難しいという制約がありました。しかし、AIを組み込んだAI-OCR技術は、文字の認識精度が飛躍的に向上し、幅広い形式の書類に対応できるようになっています。

eKYCにおける活用

AI導入によるユーザー体験の向上

ユーザー視点からの改善

AI導入は、eKYCを利用するユーザーにとっても大きな利点をもたらします。特に、手続きの迅速化と簡便さが顕著です。従来の本人確認手続きでは、審査結果が出るまでに数日を要するケースもありましたが、AIを活用することで、数分以内に手続きが完了することが一般化しています。

ユーザーの安心感向上

AIによる高精度な審査と不正検知は、ユーザーがサービスを安心して利用するための信頼性向上に寄与します。特に、金融サービスや不動産契約など、セキュリティが重要な分野では、AIの導入が大きな付加価値を生み出しています。

AIで進化するeKYC

AI技術は、eKYCにおける効率化、安全性、ユーザー体験向上を実現する強力なツールです。ただし、ディープフェイクなどの新たな脅威に対応するため、技術の進化だけでなく、法規制や倫理的な観点からの取り組みも求められています。今後もAIとeKYCの融合による進化が期待される中で、企業やユーザーがどのようにこの技術を活用していくかが鍵となるでしょう。