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アンチマネーロンダリングにeKYCを活用

アンチマネーロンダリング(AML)とは

アンチマネーロンダリング(AML)とは文字通り「マネーロンダリング」に対抗する取り組みであり、不正な手段によって資金の出所を分からなくすることへの対抗措置として、国際的にアンチマネーロンダリングの体制強化が重視されています。

そもそもマネーロンダリングはテロ組織や犯罪集団などへ資金を流すために用いられており、アンチマネーロンダリングの適正化で犯罪組織などの資金源・活動資金を排除することは、被害の防止だけでなく市場の健全化にもつながります。

eKYCによる本人確認や認証強化は資金の流れを透明化し、アンチマネーロンダリングを強化できることがポイントです。

日本におけるアンチマネーロンダリング

アンチマネーロンダリングは国際社会における共通課題であり、当然ながら日本においても積極的な取り組みが求められています。そのため例えば金融庁は金融機関における取引のモニタリングやフィルタリングを主導しており、アンチマネーロンダリング対策を講じない企業に対して行政処分が下されることもあります。

しかし世界レベルで見ると日本の危機意識は不十分であり、法体制の不備などが国際機関であるFATF(金融活動作業部会)から指摘されていることも事実です。

犯罪収益移転防止法の遵守

日本国内におけるアンチマネーロンダリングの取り組みとして、まず「犯罪収益移転防止法(犯収法)」の存在を考えなければなりません。

犯収法は金融機関などの指定事業者に対して、金融取引によるお金の流れが犯罪組織の資金源などにならないよう管理や届出を義務づける法律であり、例えば疑わしい取引を発見した場合、金融機関は公的に届出なければなりません。

そのため犯収法は日本国内のアンチマネーロンダリングの取り組みとして重要である一方、あくまでも不正取引を予防するための法律であり、マネーロンダリングを直接取り締まる法律でないことが課題です。

国際社会で連携して常に対策強化

アンチマネーロンダリングの取り組みを世界規模で取り扱う国際機関が「FATF(金融活動作業部会)」であり、日本もまたFATFや世界各国の政府や企業と連携してアンチマネーロンダリングの強化に尽力しています。

現代はインターネットが普及したことで個人でも世界規模のマーケットへアクセスすることが可能となっており、マネーロンダリングの手法や手口の巧妙化・多角化が問題視されています。そのため日本ではFATFの他にもアジア・太平洋地域のマネーロンダリング対策フォーラム「APG」などと連携して、情報交換やセキュリティ強化に努めている現状です。

各機関のマネーロンダリング対策

犯収法の遵守や国内外の機関や企業の連携によるアンチマネーロンダリングの体制強化が進められているとして、実際にそれぞれの機関や企業においてはどのようなマネーロンダリングの手法に備えているのでしょうか。

ここではマネーロンダリングとなる事例や、マネーロンダリングを抑制するための取り組みなどを紹介します。

違法な営業者から家賃名目などで金銭を受け取る行為

例えば不動産を所有する会社員などが、違法な営業を行っている人物と知りながら事業所の拠点として物件を貸し出し、家賃名目で自己名義の口座へお金を振り込ませるようなケースがあります。さらにそこで受け取ったお金を会社員が使用することで、違法な収益のマネーロンダリング(資金洗浄)が実行されるという流れです。

なおマネーロンダリングが発覚した場合、犯罪によって得られた収益は剥奪され、また会社員も刑事罰の対象となります。

盗品であると知りながら商品を買い取り、直後に転売した

芸術品や骨董品などに関して、盗品であると知りながら古物商が安価で買い取り、それを即座に別の古物商へ高額転売して、改めて被害者が盗品を取り戻そうとした時に善意の第三者として再買い取りなどを求める手法も問題です。

このような場合は取引を行った人物などの関係を捜査して、違法性が認められれば盗品等有償譲受け及び組織的犯罪処罰法違反といった事由で検挙されることもあります。

振込金額を誤ったとして差額分を現金で受け取る

SNSを利用した特殊詐欺の手口として注意喚起されている犯罪の中に、一般ユーザーの個人口座を利用したマネーロンダリングがあることも無視できません。

この場合、まずターゲットから個人口座を聞き出し、違法な行いによって得られた資金を入金します。しかしその際に「想定した金額よりも多く振り込みすぎた」などと告げて、ターゲットを指定場所に呼び出して現金で差額分を受け取るという流れです。

これにより犯罪組織は自分の口座を使うことなく違法な収益を洗浄することが可能であり、取引記録にもターゲットの口座情報しか残らない点が悪質です。

事業者が実施すべきアンチマネーロンダリングの取り組み

マネーロンダリングの手口や手法には、企業間や組織間で行われるものから個人をターゲットにしたものまで様々なものがあります。しかし、少なくとも事業者は社会的信用や経営リスクを考えて、日頃からきちんとアンチマネーロンダリングの取り組みを考えていかなければなりません。

ここでは事業者が取り組むべきアンチマネーロンダリングについて解説します。

本人確認および取引モニタリング・フィルタリング

その振込や入金処理を行っている人物が誰であるのか、その取引がどのような人物や企業間で実施されているのか、出金する相手は誰であるのかなど、本人確認を厳正化することで不正な金融取引や資金の流れを透明化することが可能です。また、本人確認を厳格化することで取引の信用性を向上させられるだけでなく、第三者によるなりすましや詐欺・偽造といったリスクを軽減できることもポイントです。

本人確認が正確に行われていれば、不正な手法で行われた取引であっても犯罪者を取り締まりやすくなり、そのために予防効果として発揮されることが重要になります。

なお本人確認や顧客管理のデータと取引履歴を紐づけることで、取引のモニタリングや送金先のフィルタリングを強化し、その後の資金の流れを追跡したり疑わしい取引を停止したりとアンチマネーロンダリングの取り組みを合理化できます。

その他、自社として本人確認を厳格化していることを表明できれば、その取引に参加する顧客やその企業を利用するユーザーに対しても信頼感や安心感を提供することが可能です。

アンチマネーロンダリングでは2種類の本人確認が重要

アンチマネーロンダリングのために本人確認を強化する場合、「身元確認」と「当人認証」の2つのポイントで本人確認を実施しなければなりません。

身元確認

身元確認は、取引を行うユーザーについて実在することや、居住地など具体的な情報を確認する作業です。例えば身分証明書の提示や本人確認書類の提出を求める他にも、本人確認書類へ記載されている住所へ転送不要郵便を送付したり、現地へ訪問したりして、その人物が実際にそこへ存在することを確認します。

銀行口座の開設やクレジットカードの申込みでは身元確認が必ず行われます。

当人認証

当人認証とは、その取引を行おうとしているユーザーが、身元確認によってチェックされた人物その人であると確認するための本人確認です。当人認証はなりすましを予防するために不可欠な本人確認であり、例えばパスワードの利用(知識認証)や指紋や顔などを使った個人の識別(生体認証)、さらにマイナンバーカードのICチップのように本人のみが所有しているとされるものを使ったチェック(所有認証)などがあります。

eKYCで取り組むアンチマネーロンダリング

eKYCはオンラインで本人確認を実施するためのシステムであり、eKYCによって身元確認や当人認証を合理化することが可能です。またeKYCは郵便物の送付や担当者との対面による応談といった手順を省略できるため、本人確認にかかる時間を短縮して利用者にとっても利便性を向上させられることが強みです。

アンチマネーロンダリングでは本人確認が重要になるからこそ、手続きの適正化と簡便化を同時に追求できるeKYCが注目されています。

eKYCを導入するメリット

生体認証で不正がしにくい

eKYCの手法としてスマートフォンの指紋センサーやデジタルカメラなどを使った生体認証は有効です。そもそも指紋は犯罪捜査や刑事裁判での証拠にも採用されるほど個人識別の手段として利用価値のあるものであり、また画像処理システムや画像識別システムの性能進化によって双子や化粧前後であっても個人の顔を識別できるサービスが誕生しています。

生体認証はそれぞれの個人に特有の生体要素を使った本人確認であり、特に当人認証の手段として有効です。

事業者側での確認業務を効率化できる

アンチマネーロンダリングの取り組みを考える上で、自社としての体制強化だけでなく、取引先との関係についても注意しなければなりません。また問題として、それぞれの企業がマネーロンダリングに加担していると気づいていないケースがあることも重要です。

eKYCを使って迅速かつ正確に本人確認や情報検証を実施できるようになれば、BtoBの取引や契約においても書類を使った確認作業の手間を省いて業務を効率化することができます。

待ち時間が少なく利用しやすい

eKYCの利点として、オンラインでスムーズに処理を行えることが挙げられます。

例えば複数のユーザーや取引相手を対象として同時に手続きを行わなければならないような場合、対面や人力による本人確認ではどうしても処理待ちの時間を解消できません。しかしeKYCであればシステムによって複数のユーザーの本人確認を同時に処理できるため、ユーザーにとっては待ち時間を減らして利便性を向上させ、事業者も担当者の負担を軽減できます。

カスタム性の高さ・セキュリティに注目して選ぶのがおすすめ

犯罪の手口や犯罪組織のネットワークは多様化しており、マネーロンダリング対策は世界的に共通の社会的責任になっています。そのためeKYCを導入してアンチマネーロンダリングを強化することは企業にとって有効な経営戦略ですが、一方でシステムの信頼性や正確性が不可欠だからこそ、自社に合わせたカスタマイズ性やセキュリティ機能にこだわることも大切です。

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